クロスロードラヴァーズ
翌日の昼休み。
「リンゴの味?なんや、その問題は。」
郁は、弁当箱のタコ型ウィンナーを頬張りながら、きょとんとした表情で梓に言葉を返した。
「リンゴって、剥く人によって味が変わるんだって。郁……知ってた?」
「初めて聞いたわ。柚枝はんは聞いたことあるかいな?」
「ううん、うちも聞いたことない。柔らかいリンゴと固いリンゴがあるのは知ってるけど。あと、蜂蜜リンゴは甘くて美味しいよね。」
柚枝は、デザートのプリンをスプーンですくいながら言った。
「誰も知らないよね、普通……。」
「そもそも、誰から聞いたん?」
「そ、それは秘密。」
梓は目を伏せて、視線を二人から逸らした。
「もしかして……聖河君?」
柚枝がポンと手を打ち鳴らして、名前を上げる。
「えっ!?あっ……うん。そうなんだけど……」
「聖河?誰や、それ。」
聞き慣れない名前に、郁が怪訝そうに目を細める。