クロスロードラヴァーズ



「“誰だ”じゃねえだろ……相棒。まじかよ……冗談抜きで覚えてねえの?」


「相棒というからには、知り合い以上の仲のような気はするが……。」


嘘はついていないようで、聖河は思い出そうと額に手を当てて考えている。



「俺様を忘れるなんていい度胸してっぜ、此処梨。リンゴの味……そう言えば、思い出せっだろ。次来る時までに思い出しておけよ!」


人差し指をビシッと聖河に突きつけて言うと、男性は足早に病室から出て行く。



「リンゴの味……思い出したな。あいつは……思い出さなくてもよい類のやつだから思い出せなかったのか……。」


自己解決するように呟くと、聖河はテレビの棚に置かれた小説を手に取る。
< 86 / 230 >

この作品をシェア

pagetop