クロスロードラヴァーズ
その瞬間。
「聖河君、久しぶりっ!」
閉められたはずの病室ドアが、少女の声と共にガラッと音を立てて開いた。
「柚枝……。」
「梓ちゃんと郁ちゃんも居るよー。」
「せ、聖河、今晩は……。」
柚枝の後ろから、梓と郁が顔を見せる。
「梓はわかるが……郁とは?」
「オレが郁や。名字は的場。梓はんの従兄弟で柚枝はんの友達や!」
失礼するでと一言断りを入れてから、郁と梓と柚枝は聖河のベッドに集まる。
「的場 郁か。自分は、此処梨 聖河だ。よろしく頼む。」
そう言って頭を下げる聖河に、
「……堅すぎるわ、聖河はん。もっと気楽にやろうや!」
郁はサバサバした態度で返した。
「気楽にと言われても……」
「まず……オレのことは呼び捨てすること。会話は……梓はんや柚枝はんと話してる時と同じでええんや!」
「あ、ああ。努力はしてみる。」
郁の勢いに押され気味の聖河。
柚枝と梓が顔を見合わせて、ふふっと笑った。