クロスロードラヴァーズ
「……梓。」
最後に出て行こうとした梓の背中に、聖河が呼びかけた。
「な、何、聖河……?」
梓はどきまぎしながら振り返る。
「今週の木曜日……退院が決定した。退院したら、自分は叔父の家に帰宅し、大学に復帰するつもりだ。もう……梓とは会えなくなる。」
「えっ?会えなくなるってどういうことよ、聖河!?」
くるりと踵を返し、聖河につかつかと詰め寄る梓。
聖河は顔を伏せて言葉を続ける。
「……そのままの意味だ。大学生と高校生……歳も環境も違いすぎる。」
「歳は関係ないでしょ!聖河……私に会いたくないってこと?私の顔は見たくないってこと……?」
「それは違う、梓。自分は……」
「言い訳なんか聞きたくない!何よ……ケガが治ったら、他人ってわけ?私はもう用済みってわけ!?馬鹿……聖河の大馬鹿!!」
一方的に想いを吐き出すと、梓は振り返らずに病室を出て行く。
「梓……!!」
聖河は右手を前に出し名前を呼んだが、梓の耳にはもう何も聞こえなくなっていた……。