恋するために生まれた
「ユウのお父さんは
 私の先輩だったの」

「…そうなんだ」

「中学生の頃からずっと好きで
 頑張って同じ高校に入って。
 でも告白できたのは
 高校を卒業してから」




今までそんな話
聞いたことなかった。

あたしはお父さんの写真も
小さな頃に見たきりだし
年齢もよく知らない。

父方のおじいちゃんは
あたしが産まれる前に
亡くなっていて

おばあちゃんは
あたしが5歳のときに
この世から去った。



だから
お父さんの話をしてくれる人が
誰もいなかったのだ。





「ユウがどんな恋愛をしても
 私は何も言わない。
 でも後悔だけはしないでね」



お母さんはそう言うと笑って
部屋を出て行った。





“後悔だけはしないでね”


なんで母がこんなこと言ったのか
わからないけれど

母と久しぶりに
深いとこにちょっとだけ触れるような話ができて
素直に嬉しかった。
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