恋するために生まれた
朝からイライラすると
その気持ちをなんとなく
午後にまで引きずってしまう。


ものすごく楽しいことがあれば
イライラなんて
掻き消されるけど

その“ものすごく楽しいこと”は
“ツバサとの時間”しか、ない。



あたしはいつにも増して
学校でボーッと
(というより悶々と)過ごし
里美との会話もそこそこに
授業が終わると走って
病院に向かった。






――ツバサの退院する日。


さすがに退院だから
家族の人が来ると思っていたら
ツバサは
“誰もこねーよ”と言った。




そして
“待ってるから早く来い”とも。





あたしたちはまだ
ケータイの番号も知らない。
メールアドレスも知らない。
もちろん、家も知らない。



――今日こそ聞かなきゃ。


あたしは全速力で駆けながら
朝のイライラなんて
すっかり忘れていた。
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