恋するために生まれた
「キライなの?お母さんのこと」



ベッドの上に
あぐらをかいて座るツバサに
あたしは聞いてみた。



「おまえ、背どのくらいある?」

「えっ…145だけど」

「ちっちぇーなぁ」

「…見ればわかるでしょ」



ツバサはニカッと笑った。


まだ
聞かれたくないのかもしれない。
お母さんとのこと。




「ユウ、番号教えろよ」

ツバサはそう言うと
そばにあった鞄から
ケータイを出した。


「あ、あたしも聞こうと思ってた」

「メアドもな」

「もっちろん♪」




あたしたち、
まだ何もお互いのこと知らない。

これから知っていくんだ。




「“ツバサ”って、漢字?」

「カタカナ」

「あっ…あたしもだよ!
 めずらしいよねぇ」

「カタカナが本名の奴、
 初めて見た」

「自分もじゃんっ!」

「だからぁ、俺以外で!」




些細な共通点。
だけど“運命”を感じてしまう。

これがきっと、恋のなせる業。





「どうしてツバサ、なのかな」

「わかんねぇ。聞いたことねぇし」

「誰がつけた名前なの?」

「知らねぇ」





ツバサはそう言うと
隣に座れ、というように
自分の隣をポンポンと叩いた。


そんな小さな出来事さえ
あたしをドキッとさせる。



あたしはツバサの隣に座ると
ドキドキが伝わらないように
大きめの声で喋りだした。



「ユウっていうのはね、
 オンリーユーのユーなんだって」

「いいな、それ」

「たった一人の、ユウなの」

「大事にされてんだな」

「お父さんがつけたんだって」




どうでもいいよね、こんな話。
でも沈黙が
なんだか怖くて
あたしはペラペラ喋り続ける。
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