恋するために生まれた
「ユウ最近変わったよね」

学食でランチをしていると
里美が突然そう言うので
あたしは飲んでた牛乳を
吹き出しそうになった。



「どっ…どこが?」

「うーん、カワイクなった!」

「まじでっ?」

「うん。乙女〜って感じ」




たしかに最近、
ダイエットを始めたり
肌の手入れも丁寧にしてみたり
気をつかうようになった。


ツバサに
カワイイ、って思われたいから。




「ユウって私に
 何にも話してくれないね」

「え…」

「友達なのにさ、
 私ばっかり相談してる」

「ごめん…」

「もっと頼ってよねっ!
 サビシイじゃん」




里美はてれくさそうにそう言うと
ニコッと笑った。






“友達”





その言葉が
なんだかくすぐったくて
それでいて温かかった。


ツバサと出会ってから
恋をしてから
すべてのものが温かく感じる。

今まで感じなかった温度。


恋をすると
温かい気持ちになるんだね。
優しい気持ちになるんだね。

あたし、
ツバサを好きになってから
目に映る全てのものが
愛おしく感じる。








「あたしね…好きな人いるんだ」

「うん…知ってたよ。
 言ってくれるの待ってたの」

「そっかぁ、ごめん…」

「もーっ!謝らなくていーの」



里美は
思っていたよりもずっと
あたしのことを想っててくれたのかもしれない。

あたしのこと
“友達”だと想ってくれてた。
たぶんずっと。





ツバサと出会うまで
セピア色だった景色は
ツバサと恋をしてから
優しく色づきはじめた――。
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