恋するために生まれた
「あ、うちココ。」


あっという間に
家に着いてしまった。



「そーいえば俺
 おまえんち初めて来た」

「そっか。そーだね!」

「結構近いな!」



ツバサが
つないでいた手を離した。

あたしは少しだけ淋しくなる。



「また明日な」

「うん、またね」

「あったかくして寝ろよ!」

「子供じゃないんだけどっ」

「ははっ。そーだな」





ドキ…ン


ツバサの手が
あたしの頬に触れた。



「冷たくなってる」

「そ…そう?」



あたし絶対真っ赤になってる。

もうやだやだやだ。恥ずかしい。



「風邪ひくから早く入れ」

「うん…」

「じゃあな!」


手をふって
ツバサは今来た道を
帰っていく。




あたしは少しだけ
後ろ姿を見送って
家に入った。






指先は冷たくなっちゃったけど
まだ
ツバサと手をつないでる気がする。





――洗うのがもったいないや。



部屋に入ると
あたしは明かりもつけずに
ベッドに転がった。



ツバサの声。
ツバサの笑顔。
ツバサの手…


今までのことを反芻してみる。




自分がこんなに乙女だったことに
自分自身が驚いている。


恋は人を変えるんだ。

その変化は
決してイヤなものじゃない。
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