恋するために生まれた
あたしは多分、
男の子を
特別に好きになったこと
まだ一度もない。



いい人だな、って思ったり
好感をもつことはあるけど

それは
いわゆるドキドキとかとは
かけはなれていて
単なる友達としての感情。



だからみんなが話す“恋”って
正直ピンとこない。




「ユウは大人だねぇ」

里美がケータイをいじりながら
そう言った。



「え?大人?」

「うん。
 もう悟り開いてる感じ」

「…あたしから見たら
 里美の方が大人だよ」



里美が笑ったので
なんか一緒に笑ってしまった。




里美は
男の子と付き合ったことあるし
まぁ、経験済みみたいだし
あたしよりも先をいってる。


あたしなんか
いつもすっぴんなのに
里美はいつもメイクをしてる。




――大人どころか
お子ちゃまだな、あたし。



「あっ!
 マスカラまぶたに付いてる〜」


鏡を見てメイク直しをする
クラスメートを見て


大人になるのも大変だ、
なんて思っていた。

同級生なんだけどな。
やっぱどっか、ヒトゴト。



あたしはときどき
自分がホントに
高校生なのかわからなくなる。
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