恋するために生まれた
海は思っていたよりも寒かった。


「さみぃーっ!」

「寒いよーっ」


二人でケラケラ笑いながら
砂浜を歩く。



「でもね、夏の海はあんまり
 好きじゃないんだ」

「俺も冬のがいーな」

「だよね」



あたし達には
夏の海は眩しすぎる。
明るくて、賑やかな、夏の海は。





砂浜に並んで座り
海を見つめる。


まるで
世界中に
二人きりしかいないみたいだ。





「なんでだろ…」


ツバサが小さな声で呟く。


「えっ?」

「俺…ずっと誰のことも
 信じてなかったんだ」

「…うん…」

「おまえのことだけなんだ。
 信じられるのは」

「…あたしはツバサのこと
 裏切らないよ?」

「ありがとな」





――ありがとな――



熱いものが込み上げてくる。

何か言ったら泣きそうで
あたしはツバサの肩に
コテン、と頭を乗せた。
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