恋するために生まれた
「ユウ?」


後ろから聞こえる声に
驚いて振り向くと
そこに立っていたのは
母だった。



「お母さんっ!」


ツバサはその声に驚き
つないでいた手を離すと
母に向かって真面目な顔で挨拶をした。



「はじめまして。
 片桐ツバサといいます。」





……え?



母の顔は
明らかに凍りついていた。



「…片桐…さん?」

「はい、ユウさんとお付き合いさせていただいてます」





――おかしい。


何かが変だ。
不穏な、空気。



「ユウと…」

「ご挨拶が遅くなって
 すみませんでした」


ツバサはペコッと頭を下げて
「じゃあ明日」とあたしに言うと帰っていった。





「…お母さん?」

「ユウ……」





次に続く言葉。

なぜだかあたしは
少しだけ、予想できていた。




「あの子だけは
 認められないわ」






目に映る景色が
モノクロに、見えた。
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