恋するために生まれた
君。


彼女と出会ったのは
桜の季節だった。


毎朝、
同じ電車に乗っている彼女は
真っ白な肌に
整った顔立ちで
ひときわ目立つ存在だった。


話したことどころか
声も聞いたことがないが
肩まで伸びる栗色の髪が綺麗で
可憐な子だった。


左手の薬指に光るリングが
彼氏か夫の存在を物語っている。


若く見えるが
歳はあまり俺と変わらないだろう。


俺は心の中でひそかに
『電車の君』と呼んでいた。




まるで
真っ白なバラの花みたいな
美しい子だった。
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