恋するために生まれた
目をつぶっていたあたしは
“おまえ”が
あたしのことだと
理解するのに数秒かかった。
ゆっくりと瞼を開くと
一目で入院患者ってわかる
パジャマ姿に松葉杖をついた
男の子が目の前に立っていた。
「おまえ、毎日来てんのな」
目が合うなり
その男の子は言った。
――初対面なんだけど。
あたしが怪訝な顔して
黙りこくっていたので
男の子はバツの悪そうな顔で
「俺も毎日ここに来てんだよ。
おまえ制服だし目立つからさ」
と早口で言った。
そっか。
たしかに患者さんか
看護師さんや医者くらいしか
屋上にはいない。
あたしって
目立ってたんだ…
しかも
あたしはこの男の子を
見たこともないときてる。
いつも
空しか見てないのだ。
今みたいに
目を閉じてることも多いし。
あたしってば
どんだけぼんやりしてんだか。
あたしが黙ってるので
その男の子は
なんだか気まずそうにしてる。
あたしは
気まずさから解放してあげようと
立ち上がってこう言った。
「あたし、広瀬ユウ。
あなたは?」
“おまえ”が
あたしのことだと
理解するのに数秒かかった。
ゆっくりと瞼を開くと
一目で入院患者ってわかる
パジャマ姿に松葉杖をついた
男の子が目の前に立っていた。
「おまえ、毎日来てんのな」
目が合うなり
その男の子は言った。
――初対面なんだけど。
あたしが怪訝な顔して
黙りこくっていたので
男の子はバツの悪そうな顔で
「俺も毎日ここに来てんだよ。
おまえ制服だし目立つからさ」
と早口で言った。
そっか。
たしかに患者さんか
看護師さんや医者くらいしか
屋上にはいない。
あたしって
目立ってたんだ…
しかも
あたしはこの男の子を
見たこともないときてる。
いつも
空しか見てないのだ。
今みたいに
目を閉じてることも多いし。
あたしってば
どんだけぼんやりしてんだか。
あたしが黙ってるので
その男の子は
なんだか気まずそうにしてる。
あたしは
気まずさから解放してあげようと
立ち上がってこう言った。
「あたし、広瀬ユウ。
あなたは?」