ジュリエットに愛の花束を。
朝起きても気分が凹んだままだったから、なんとなく気合いを入れようかと思って、重ねたメイク。
せめて見た目だけでも頑張ろう。
なんて思ったけど、二重塗りしたマスカラのせいで、まつげが重い。
「ねぇ、例えば、皐の彼氏が一つの事をずっと頑張ってるとするじゃん? それはもう熱心に。
で、自分を振り返った時、特に何も頑張ってない事に気付いたらどうする?」
「そこまで言うなら、素直に椎名先輩がって言いなよ。バレバレだし」
「……で、どうするの?」
返事を促すと、皐は「んー」と唸って天井を見上げた後、首を捻った。
「別にどうもしないんじゃない? 彼氏が頑張ってるのはいい事かもしれないけど、だからって自分が頑張らなくちゃいけないわけじゃないし。
瑞希は誰にも気兼ねしないで、ダラダラしてればいいんじゃない?」
「……別にダラダラしたくて聞いたわけじゃないけどね」
「っていうかさー、コレ! って道を見つけて、それに打ち込んでる人なんて少ないんじゃない?
大体の人がそれを探しながらも見つけられなくて、適当な場所に就職してなぁなぁに暮らしてるんじゃないの?
別にコレ! がなくても普通に幸せだし」