ジュリエットに愛の花束を。


朝起きても気分が凹んだままだったから、なんとなく気合いを入れようかと思って、重ねたメイク。


せめて見た目だけでも頑張ろう。

なんて思ったけど、二重塗りしたマスカラのせいで、まつげが重い。


「ねぇ、例えば、皐の彼氏が一つの事をずっと頑張ってるとするじゃん? それはもう熱心に。

で、自分を振り返った時、特に何も頑張ってない事に気付いたらどうする?」

「そこまで言うなら、素直に椎名先輩がって言いなよ。バレバレだし」

「……で、どうするの?」


返事を促すと、皐は「んー」と唸って天井を見上げた後、首を捻った。


「別にどうもしないんじゃない? 彼氏が頑張ってるのはいい事かもしれないけど、だからって自分が頑張らなくちゃいけないわけじゃないし。

瑞希は誰にも気兼ねしないで、ダラダラしてればいいんじゃない?」

「……別にダラダラしたくて聞いたわけじゃないけどね」

「っていうかさー、コレ! って道を見つけて、それに打ち込んでる人なんて少ないんじゃない?

大体の人がそれを探しながらも見つけられなくて、適当な場所に就職してなぁなぁに暮らしてるんじゃないの? 

別にコレ! がなくても普通に幸せだし」




< 105 / 355 >

この作品をシェア

pagetop