ジュリエットに愛の花束を。


「瑞希さん」


校内でこんな呼び方する人を、あたしは一人しか知らない。

そして、それを分かった上で振り向きたくない。


「瑞希さん」


だけど、二回も呼ばれちゃえば無視するなんてできなくて。

仕方なく、ゆっくりと振り向いた。


その先にいたのは……

キラキラした笑顔を向けるアリサさん。


今日は肩から提げてるバックがスパンコールで、キラキラしてる。

渡り廊下の窓から差し込んでくる日差しが反射して、目に痛い。


「……はい」

「あれ? なにかあったの? 浮かない顔してる」


「アンタの顔見たせいだって言ってやんなよ」なんて、皐がこそこそと言ってくるのを無視して、愛想笑いだけ浮かべてみる。


そんなあたしに、アリサさんはにこりと微笑む。


「そんな顔してたら、椎名くんが可哀想よ? 

女の子はいつでもにこにこしてなくちゃ。男の人はそれを求めてるんだから」

「……はぁ」






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