ジュリエットに愛の花束を。


「……何か夢中になれるモノ探してて」

「夢中になれるモノ?」

「樹には陸上があるじゃん。だから、あたしも何かないかなって」

「さっきの『ライバルとしては……』は、その悩みのどの辺に出てきたんだよ」


鋭い突っ込みに、ドキっとしながら言葉を探す。


「何事を始める時にも、ライバルっていた方が燃えるじゃん。そういう事」

「まぁ、いなきゃいないでやる気でないモンかもな。でも、瑞希がそんな積極的に何かを探してるなんて意外っつぅか……。

なんで急に探す気になったんだよ」

「……自信をつけたいから?」


疑問符をつけて言うと、樹はしばらく不思議そうにあたしを見てた。

その視線に気付いて、パッと明るく笑ってみせる。


「ほら。お兄ちゃんとこのお嫁さんがかなりいい女だから。

ちょっとあたしも頑張ってみようかなって。そんな程度」


誤魔化すと、樹は柔らかく微笑む。

あたしが誤魔化した言葉になんて、気づいてるくせに。







< 114 / 355 >

この作品をシェア

pagetop