ジュリエットに愛の花束を。


なのに、騙されて微笑んでくれる樹は、大人だ。

あたしだったら、絶対に問い詰めるのに。

樹が聞かないのは、あたしが素直に言わないって分かってるからかもしれないけど。


だけど、それにしたって、ストレス溜まりそう。

何かを誤魔化された事に気付きながらも、ただ微笑むなんて。


樹は、優しすぎる。


「瑞希はブラコンだからな」


その微笑みに、胸がキュっと縮こまって、樹への気持ちを再確認する。


樹はあたしでいいの?

こんな可愛くない女で損してない?

減らず口ばっかで呆れてない?


口を開ければ、そんな疑問ばかりが出てきそうだったから、黙って樹の腕に自分の腕を絡めた。

今日は、いつもみたいな可愛くない言葉を言いたくなくて。


あたしが触れる事を当たり前に受け入れてくれる樹に、嬉しくなってまた胸が鳴いた。





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