ジュリエットに愛の花束を。


樹が、困ったような表情を浮かべてあたしを見る。


「勝手に暴走しないでよっ。

あたし、本当に隠してない……っていうか、隠してたとしても、今隠してるだけで終わったらちゃんと言うし!!

言えないのだって、女の複雑な事情が色々とあるんだからっ!!

樹に言えないでいるあたしだって、つらいんだから!! 

そこをもっと汲み取ってくれたっていいじゃんっ!! エロ樹っ!」

「……」


完全に自己嫌悪に陥って言葉も出ない樹を睨んでから、教室を出る。


「樹のばか!! やっぱ無理矢理が好きなんじゃん!! この変態っ!! サド!!」


最後に、もう一度怒りをぶつけてから教室のドアを閉めて、連れてこられた廊下を戻りながらもぞもぞと服を直す。

生徒が出払って静まり返っている廊下に、あたしのペタペタという足音が響いてた。


少しだけ後ろを振り向いたけど、樹の姿はなくて。

あの部屋でまだ一人反省会をしてる様子が目に見える。


「……樹のばか」


決して届かない声で呟いてから、ため息を落として、皐の待つ中庭に急いだ。



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