ジュリエットに愛の花束を。
「大丈夫だよ。だって、往復だけで一時間半くらいかかるし。
お兄ちゃん、真人くんにべた惚れだから、すぐに帰って来るなんてありえない」
「……お兄さんさ、子供が可愛いのに、なんで急にここに帰ってきたりしたんだろうな」
床にあぐらをかきながら難しい顔をする樹に、ベッドに座ってるあたしも首を傾げる。
急に三日前に帰ってきたお兄ちゃんは、多分この家に居座るつもりだと思う。
で、あたしを見張るつもりだ。
「仕事だってあるし、家庭の事だってあるのにね。
お兄ちゃん、別にこの家に執着とかしてなかったと思うんだけどな」
「んー……」と唸るあたしに、同じように唸っていた樹が急に顔を上げる。
「……この家に思い入れはなくても、瑞希にはある、とか」
「なにそれ」
「瑞希がブラコンだったみたいに、お兄さんもシスコンで、瑞希が変な男にそそのかされてるのを見てられねぇんじゃねぇ?」
自分の事を「変な男」っていう樹に、あたしはおかしくなって笑う。