ジュリエットに愛の花束を。


「瑞希は、猫タイプだなー」

「……やっぱり分かってて言ってたんだ。そうかな、とは思ってたけど。

なに? イヤミ?」


きのこたっぷりのオムレツを食べながら言うと、お兄ちゃんは軽く笑う。


「いや。そこが可愛くない事もないし。

……椎名だってそういうとこが気に入ってんだろ?」

「……あたしに聞かれても分かんないけど。だといいね」


話題が話題なだけにそっけなく答えると、お兄ちゃんはしばらく黙った後ぽつりともらす。


「……感心するよ、正直」

「は?」

「瑞希は、本当は思いっきり甘やかされて大切にされてるのが好きなのに、それを素直に言わないし、言わないどころか、いらない事をペラペラしゃべって、こっちの神経逆なでするし」

「……悪口?」

「それを椎名は上手く手なずけて、それだけじゃなくて、瑞希の気持ちも満たしてる。

おまえ、今、幸せだろ」

「……」


なんとも答えにくい質問が飛んできて、目を逸らす。

幸せ……じゃないとは思わない。

素直に白状しないだけで、樹とは……その、運命とかそんな言葉まで浮かんじゃうくらいだし。


それは、本当によかったと思ってるし、幸せな事なだと思う。



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