ジュリエットに愛の花束を。
だけど、それをこの場で認められるほど、素直にはなれないし。
「ご想像におまかせします」
結局そんな言葉しか出なくて。
だけど、あたしの性格なんかお見通しのお兄ちゃんは、その意味が分かったみたいで小さく笑った。
「お兄ちゃんだって、今幸せでしょ。里香さんがいて真人くんがいて。
こんな、あたししかいないような家にいても、つまらないんじゃない?」
不貞腐れながら言うと、お兄ちゃんは少しだけ黙る。
何かを考えているような表情を眺めていると、それに気付いたお兄ちゃんはすぐに笑顔を作った。
「もちろん、あんないい嫁さんと可愛い子供がいて、これ以上の幸せはない。
……けど、おまえとの生活も悪くないよ」
「……あっそ」
どうにも納得いかない答えが返ってきて、ため息混じりにそれだけもらした。
ずっと、何かを誤魔化しているようなお兄ちゃんの態度。
それはきっとこの家に戻ってきた理由にも繋がると思うんだけど……それが何なのかはまったく分からない。
まさか、本当にただ単にあたしと樹の邪魔をしにきたとか?