ジュリエットに愛の花束を。


ガタガタと席を立つ生徒達を横目に、あたしもゆっくりと席を立って。

ドアを出ようとしていた松永の姿に気付いた。


「今日は来てたんだ……」

「松永? 昨日の腹痛は冷えからくるものだったらしいよー。意外だよね、お腹弱いとかって。

全部が頑丈そうなのに」

「一週間くらい休んでくれればよかったのに」

「そんな瑞希にプレゼントー」


皐が、鞄をごそごそあさって、取り出した小さなキーホルダーを差し出した。

見慣れたそのキーホルダーは……。


「林檎うさぎがなに? 

……っていうか、ちょっと違くない? なにそれ」

「林檎を脱いだ林檎うさぎ。超激レアだよ! 

昨日、彼氏とゲーセン行って、取れたの」

「林檎脱いじゃったらもう普通のうさぎじゃん」

「まぁ、そう言わないで聞いてよ。激レアだから、かなりご利益があるらしいんだよねー。

ほら、いっつもシルバープレートに「失恋から抜け出せる」とか、そんなおまじないが書いてあるじゃん?

それが、これにはないの。

つまり、一つだけってわけじゃなくて、願い事すべてが叶えられるスーパー林檎うさぎなわけ」

「スーパー林檎うさぎ……」


って、なんだ、それ。






< 150 / 355 >

この作品をシェア

pagetop