ジュリエットに愛の花束を。
ガタガタと席を立つ生徒達を横目に、あたしもゆっくりと席を立って。
ドアを出ようとしていた松永の姿に気付いた。
「今日は来てたんだ……」
「松永? 昨日の腹痛は冷えからくるものだったらしいよー。意外だよね、お腹弱いとかって。
全部が頑丈そうなのに」
「一週間くらい休んでくれればよかったのに」
「そんな瑞希にプレゼントー」
皐が、鞄をごそごそあさって、取り出した小さなキーホルダーを差し出した。
見慣れたそのキーホルダーは……。
「林檎うさぎがなに?
……っていうか、ちょっと違くない? なにそれ」
「林檎を脱いだ林檎うさぎ。超激レアだよ!
昨日、彼氏とゲーセン行って、取れたの」
「林檎脱いじゃったらもう普通のうさぎじゃん」
「まぁ、そう言わないで聞いてよ。激レアだから、かなりご利益があるらしいんだよねー。
ほら、いっつもシルバープレートに「失恋から抜け出せる」とか、そんなおまじないが書いてあるじゃん?
それが、これにはないの。
つまり、一つだけってわけじゃなくて、願い事すべてが叶えられるスーパー林檎うさぎなわけ」
「スーパー林檎うさぎ……」
って、なんだ、それ。