ジュリエットに愛の花束を。
VS
「……き、瑞希」
「……ん?」
重たい瞼を上げると、薄暗い部屋に樹の顔が見えた。
いつも通りの視界に、樹に聞く。
「なに?」
「俺、そろそろ帰る。……お兄さん、帰ってきそうだし」
「……お兄ちゃん? あっ!」
お兄ちゃんの名前を出されて、ようやくここがあたしの部屋だって事に気付いた。
すっかり樹の部屋だって錯覚してたけど……そうだ。あたしあのまま寝て……。
ケータイを開いて時間を確認すると、16時57分。
お兄ちゃんが出て行ったのが15時前だから……。
「やばいっ……もう少しで帰ってくるかもっ!
なんで起こしてくれなかったの?!」
「だって瑞希があまりにぐっすり寝てたから。
ちょっとした運動もしたしな。……そんな熟睡するほど疲れさせたつもりもなかったんだけど。
三日間、俺がいない寂しさに夜も眠れなかったとか?」
「ち、違うっ! レポートが……っ」
と、図星をつかれて言い返そうとした時。
玄関の鍵が開く音がした。