ジュリエットに愛の花束を。
「樹、着替えてっ!!」
「俺は着替え終わってるし」
急いで服を着ていると、玄関に入った足音は迷うことなく階段を上がってきて。
次の瞬間、勢いよくドアが開けられた。
怒った顔したお兄ちゃんは、不自然に行儀よく正座していたあたし達を見て……。
わなわなと震えだす。
「おかえり、お兄ちゃん」
「すみません、少しだけ瑞希さんの部屋にお邪魔させて頂いてま……」
「出てけっ!! 勝手に瑞希の部屋に上がるなっ!!」
「それ、おかしくない?
あたしの部屋なんだから樹を入れようとどうしようと勝手でしょ。
なに、そんなにカリカリして……」
「うるさいっ、おまえは黙ってろ」
カッチーン、と何かが切れたのが自分でも分かった。
お兄ちゃんの理不尽な言葉に言い返そうと、全力で言葉を探していた時。
樹があたしの肩を叩いた。
振り返ると、少しだけ微笑んだ樹は目配せをして首を振る。