ジュリエットに愛の花束を。
お兄ちゃんがうちに帰ってきてる事、お嫁さんの立場だったら絶対に面白くないと思うのに。
里香さんは、そんな気持ちなんかまるで見せない。
肩まで伸ばしたきれいな黒髪が、冷たい風に揺れる。
その髪から覗いたピアス。
それを見つめていると、里香さんが不思議そうに首を傾げた。
「どうかした? 林檎嫌い?」
「あ、いえ。……そのピアス、去年お兄ちゃんが?」
「ああ、そう」
ピアスに触りながらクスクス笑い始めた里香さんが、あたしを見る。
「達也から……、あ、お兄さんから聞いた時、笑っちゃった。
瑞希ちゃんに頭下げて一緒にジュエリー店に入ったのに、一切アドバイスしてもらえなかったって。
ちょっと怒りながら言ってたよ」
去年のクリスマス直前。
お兄ちゃんに頼まれてジュエリー店に入った。
里香さんのプレゼントを選びたいけど、あまりに種類があってどれがいいのか分からないって言われて。