ジュリエットに愛の花束を。
「勝手に上がりこんですみませんでした。帰ります」
「……」
樹がちゃんと挨拶をしても、お兄ちゃんは無言のまま。
樹が玄関を閉めてから、あたしは後ろで見張っていたお兄ちゃんを振り返った。
「感じ悪い、お兄ちゃん」
「自分の部屋に連れ込むような男はろくな奴じゃない。さっきだっておまえの部屋に……」
「あたしが連れ込んだんだもん。あたしもろくな女じゃないから。
大体、お兄ちゃん、なんで急に帰ってきたの? 結婚してるのに、里香さんと真人くん、放っといていいの?
あ……、浮気されたの?」
あたしの言葉に、お兄ちゃんはムっとした顔で怒る。
「里香はそんな女じゃない」
「……知ってるよ。里香さんがよくできたお嫁さんだって事くらい、お兄ちゃん見てれば分かるし。
だから余計に、なんで里香さんを放ってまでうちに帰ってきたのかが分からないんだけど」