ジュリエットに愛の花束を。


可愛げもなければ減らず口で。

掃除だって苦手で、甘えるのがへたくそで。


……そんな女を可愛いと思う男が、一体、どこにいるんだろ。


お兄ちゃんのせいで、ペコンと音がしそうなくらいに気持ちが凹んだ。

がっくりと肩を落としたあたしを見て、さすがにまずいと思ったのか。

お兄ちゃんが慌てて声をかける。


「そういえば、駅前のケーキ屋でケーキとプリン買ってきたんだ。

瑞希、好きなの選んでいいから。後で食べような。

お、シチューがもう食べられそうだな。少し早いけど夕飯にするか」

「……」


落ち込んだ気分のままビーフシチューを身体に流し入れて、お兄ちゃんの買ってきたケーキも詰め込んだ。


プリンは、色んな意味で食べる気にならなかったけど。


食事中、終始会話を盛り上げようと頑張ってたお兄ちゃんには申し訳なかったけど、あたしの落ち込んだ気分はそのまま上がってこようとはしなかった。


お腹はいっぱいなのに。

「ペコン」って音が、身体に響く。



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