ジュリエットに愛の花束を。
『ああ、それがな……やっぱり上手くいかないな。
俺が口出し過ぎなのは分かってるんだけどな、つい……』
そんな空間に、ドア越しのお兄ちゃんの声が静かに聞こえてきて、顔をしかめる。
この話題は、もしかしたら。
『瑞希が年齢的にはもう十分大人だって事は分かってるんだ』
……やっぱり。
自分の話題を、しかも自分がいない場所で話されてるのは落ち着かない。
しかも聞こえちゃってるし。
一番嫌なパターンかも。
『だけど、やっぱり妹だし。あいつは本当に素直じゃないから……見てるとハラハラするんだ』
堪らない気持ちに、思わずベッドから起き上がって部屋をうろうろする。
しばらくそうしてみたけど、まだ聞こえるお兄ちゃんの声。
顔を限界までしかめた後、クローゼットを開けて上着を取り出した。
そして時計を見て……あと10分で22時を回る事に気付きながら、そろーっと家から抜け出した。