ジュリエットに愛の花束を。


『ああ、それがな……やっぱり上手くいかないな。

俺が口出し過ぎなのは分かってるんだけどな、つい……』


そんな空間に、ドア越しのお兄ちゃんの声が静かに聞こえてきて、顔をしかめる。


この話題は、もしかしたら。


『瑞希が年齢的にはもう十分大人だって事は分かってるんだ』


……やっぱり。

自分の話題を、しかも自分がいない場所で話されてるのは落ち着かない。

しかも聞こえちゃってるし。

一番嫌なパターンかも。


『だけど、やっぱり妹だし。あいつは本当に素直じゃないから……見てるとハラハラするんだ』


堪らない気持ちに、思わずベッドから起き上がって部屋をうろうろする。

しばらくそうしてみたけど、まだ聞こえるお兄ちゃんの声。

顔を限界までしかめた後、クローゼットを開けて上着を取り出した。


そして時計を見て……あと10分で22時を回る事に気付きながら、そろーっと家から抜け出した。



< 187 / 355 >

この作品をシェア

pagetop