ジュリエットに愛の花束を。


11月の夜空は、冷たい空気に包まれてどこまでも青黒く透ける。

微かに揺れて見える星の光は、この空の中では本当に小さな小さな光にすぎないのに、心細さなんて感じさせないほどにきれいに輝いていた。


そんな空の下を、一人で歩く。


行き先とかは決めてない散歩。

気持ちが落ち着いたらバレないように帰ればいいや、と軽く考えてゆっくり歩いた。


家にいられなかった理由は……2つある。


1つは、自分の話を聞いていられなくなったからだけど、もう1つは……。


里香さんとお兄ちゃんが、あまりにお似合いに見えるから。

お互いに気遣いあって、頼り合っていつも笑顔で。


きっと、相手に自分のできる限りを全部あげてるから、あんなにも当たり前に隣にいられるんだ。

自信を持って、隣にいられるんだ。


あたしは……思ったってそれを素直に言ったりしないし、無意識じゃなければ、行動にだって表さない。

できれば、樹への大きい気持ちに気づかれたくないとすら思う。


それは、恥ずかしいからとか、そんな自分本位な理由で。


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