ジュリエットに愛の花束を。
「なんで?」
「だって、白雪姫みたいに素直に毒林檎食うとは思えねぇし、シンデレラみたいに意地悪な姉貴達の命令聞くとも思えねぇし。
自分の思った道を一途に進む、ちょっと危なっかしいジュリエットタイプだろ」
「……ふぅん」
樹の指が、あたしの髪に絡む。
緩めのパーマのかかった長い髪をすくって、樹はその髪に唇で触れる。
「まぁ、俺がロミオだったら、国外追放とか面倒くせぇ事になる前に、ジュリエットをさらって逃げるけどな」
「……足が速いのがとりえだもんね、『ロミオ』は」
「その前にジュリエットが城ん中で大人しくなんかしてねぇだろぉけど」
「……自分の思った道が外に続いてたらそうなるかもね。一途らしいから。……『ジュリエット』は」
あたしのお気に入りの笑顔を浮かべた樹が、あたしの髪に触れたまま近づき、そして―――……。