ジュリエットに愛の花束を。
ロミオ
「あー……やっちゃった」
ポケットの中で何度も振動していたらしいケータイを開いて、そうもらす。
着信6件。
不在着信ランプを光らす犯人は……5つのお兄ちゃんの名前と、その間にある樹の名前。
……樹はいいにしても、お兄ちゃんをどうするかな。
ケータイの時計は、すでに23時20分を知らせていた。
今さらだけど、こんな時間に部屋に上がりこんでいる自分を申し訳なく思えてくる。
「アリサさん、なんかこんな時間まですみませんでした」
「今さら? 部屋上がる時にもう22時半だったんだからその時点で言いなさいよ」
「……すみません」
「送っていってあげるから、ちょっと待って」
そう言って立ち上がったアリサさんが持ってきたのは、車のキー。
上着を羽織ったアリサさんに続いて部屋を出ると、冷たい空気が一気に身体の中に入り込んできて、肩をすくませる。
2階にある部屋から階段を下りて、アパートの隣にある駐車場に行って……。
アリサさんがロック解除した車に、足を止めた。