ジュリエットに愛の花束を。


「部屋で話したでしょ? ニュアンスで分かってよ」

「諦めるんですか?」

「っていうかね、元からそこまで椎名くんに固執してたわけじゃなかったって分かったし。

やっぱり、あたしはあたしの王子様を見つけなくちゃね」


にこりと微笑んだアリサさんを見つめながら、ぽつりとこぼす。


「樹は王子様キャラじゃないですけどね」

「瑞希さんもね」

「あ、樹には、もし例えるならジュリエットだって言われましたけど。

なんか、自分の思った道を貫き通す、みたいなおてんばな感じで」

「じゃあ椎名くんがロミオ? 

……なんかでも、聞いてる分にはかなり情熱的みたいだから合ってるのかもね」

「情熱的……」


あたしと樹には絶対に似合わない言葉に、苦笑いを浮かべる。

仲がいい方だとは思うけど……なんで似合わないんだろうな、そういう系が。


運命だとか、愛だとか……なんでしっくりこないかな。




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