ジュリエットに愛の花束を。


そういえば、樹も前言ってたっけ。

『なんでいちゃいちゃって言葉が似合わねぇんだろうな』とか、そんなこと。


「例えなにと引き換えでも、椎名くんは瑞希さんを選ぶのよね。きっと。

……ううん。絶対」

「……そうですか? 樹はあまり望まないから、引き換えとかってなるほど欲しがるモノなんてなさそうですけど」


呆れ笑いを浮かべながらアリサさんを見ると、その表情は意外にも真面目なモノだった。


「絶対、よ。あたしが保証する」


なんでだか不思議に思ったけど、車内に光る時計が目に入って疑問を消し去る。


23時34分。

ケータイの不在着信は7件に増えていた。

もういっその事、時間なんか忘れて里香さんと盛り上がっててくれればよかったのに。


……でも、なんかお兄ちゃんのそういうシーンは想像したくないし、出くわしたくもないな。

気まずいっていうより、生理的に無理。

あー……絶対に無理。


そう考えると、あたしが感じてたお兄ちゃんへの想いって、やっぱり恋愛じゃなかったのかな。



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