ジュリエットに愛の花束を。


クスっと笑ったあたしをアリサさんが不思議そうに見て……現実に引き戻す言葉を言う。


「ねぇ、あそこに立ってるのってご家族?」

「……兄です。門限過ぎてるんで、怒るために待ってるんだと思います」

「えっ、そんなに厳しいの?」

「ちょっと事情がありまして……」


そうこう話しているうちに、無事家の前に到着。

爆音を響かせる車に、お兄ちゃんはびっくりした顔をして。

助手席から出て行ったあたしを見るなり、言葉を失う。


「……ただいま」


あたしに視線を合わせたままフリーズしてるお兄ちゃんを眺めていると、運転席からアリサさんが出てきた。


「初めまして。私、瑞希さんと同じ大学に通っている松永アリサです。

瑞希さん、今まであたしの部屋にいたんです。少し悩んでるみたいで、ちょっと話し込んじゃって……。

門限の事、知らなかったとはいえ、すみませんでした」


丁寧に謝るアリサさんに、お兄ちゃんはぼう然としてから首を振った。



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