ジュリエットに愛の花束を。
「あ、いえ。てっきり彼氏と一緒かと思ってたので……友達と一緒だったんですね。
しかもわざわざ送ってもらって、すみません」
「じゃあ、瑞希さん。あたしはこれで」
『今のフォローは、椎名くんとの仲を邪魔したお詫び。借りを作るのとかって苦手なの。これでチャラね』
と、ウインクをしたアリサさんが車内に乗り込む。
そして、爆音と共に走り去る。
「RX-7か……あれ、欲しかったんだよなー」
お兄ちゃんが呟いた言葉に驚いて、慌てて振り返る。
「えっ、お兄ちゃんも車好きなの?」
「スポーツカーは、男なら一度は憧れるもんだろ。
まぁ、チャイルドシートがつかないからもう乗ることはないだろうけどな」
「へー……意外」
そんな事を話しながら玄関に入る。
リビングには、もう里香さんの姿はなかった。
「ねぇ、里香さん帰ったの?」
「ああ。少し前にな。それより瑞希、おまえ門限破ってまで家を抜け出すって……説教されたいのか?」
思い出したように怒り出したお兄ちゃん。
ムっとした顔を向けるお兄ちゃんに、あたしも負けずと口を尖らせる。