ジュリエットに愛の花束を。
『ところで、痴漢にあったって聞いたんだけど』
「あー……うん。なんか、本当にさらっと、風みたいに触られて……。
でもちゃんと捕まえたから大丈夫」
『ふーん。いくつくらいの奴?』
「30代だと思うけど……取り押さえるのに必死だったからあんまり顔とか見てなくて」
『ふーん……。
まぁ、仕方ねぇ事だけど……やっぱり気に入らねぇな。瑞希が他の男に触られてんの』
不貞腐れて聞こえる声に嬉しくなりながら、窓の外の月を眺める。
澄んだ空気に浮かぶ月はすごくキレイで、手を伸ばせば届きそう。
なんて、そんなロマンチックな事を考えていた時。
『今日、月がすげぇ近く見える』
樹がそんな事を言い出した。
同じように月を見上げていた事に驚きながら聞く。
「今、見てるの?」
『ああ。……なぁ、瑞希。今から顔だけ見に行ってもいい?』
「え、だって、もう24時だよ?」
『だからちょっとだけ』
嬉しい言葉に思わず頷きたくなったけど……樹は、明日も朝練だ。