ジュリエットに愛の花束を。


「んー……ダメ。朝練あるんだから早く寝て」


それを聞いた樹がなぜかふっと笑みをこぼす。


『言うと思った。……分かったよ。大人しく寝ます』

「うん」

『でも、明日の放課後は瑞希が嫌だって言っても教室まで迎えに行くから』

「放課後? なんで? 部活は?」

『明日は休む。つぅか、俺の出る大会ってもうないし。

こないだの大会終わった後捻挫してたろ、俺』

「あー、うん。右足首ね。

準優勝に喜んだチームメートが飛びついてきてやっちゃったやつね」


思い出して、少し笑いながら言う。

幸い、樹にはその後すぐに大会だとかの予定はなかったから、問題なかったんだけど……。

飛びついてきた人が、ものすごいお人よしな上に心配性の人で。

その事件後の一週間くらいは、樹はその人と共にした時間が大半を占めていたと思う。

教室移動の時も、学食でも、もちろん部活の帰りも。

いっつも一緒。


ただの捻挫なのに。



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