ジュリエットに愛の花束を。
「ごめんね、瑞希さん。椎名くんも……。
タケルがした事で色々騒がせちゃって。キツく叱っとくから」
アリサさんが、「ほらっ、帰るわよ!」と松永を連れて行く。
その後ろ姿を、樹が呼び止めた。
「松永」
樹の声に、松永がバツが悪そうに振り向いて目を合わせた。
「……はい」
「俺が陸上に戻ってきたのは、瑞希に励まされたからだ。
瑞希がいなければ、多分諦めたままだった」
「え……」
「瑞希を責めるなんて的外れもいいとこだ。
……今度余計な事を考えて瑞希を巻き込んだら、今度こそ殴るからな。今回の分も合わせて」
呆然としていた松永が、表情を歪めて視線を伏せる。
松永は、「はい……」と頷いてから、また背中を向けて歩き出した。
薄暗くなった公園に、弱い風が迷い込む。
冷たい風に身体を震わせると、樹も同じようにしていて。
目を合わせて笑った。