ジュリエットに愛の花束を。
「多分……、瑞希」
「は?」
「いや、本当の理由は俺も知らない。椎名先輩に直接聞いたわけでもないし。
……けど、俺はそう思ってる。
瑞希がいるから、断ったんじゃないかって」
「なんで……? 別にあたしと付き合ってるからって断る必要なんか……」
思いがけない言葉に戸惑いながら言うと、松永がその理由を告げる。
松永の真剣な表情になのか、告げられる言葉に何か悪い予感でも察知したのか……それとも寒さになのか。
身体が強張っていた。
「親父の会社があるのは、関西と九州が中心なんだよ。
親父の会社に入社したら……瑞希と遠距離恋愛になるのは確実だから」
「……―――」
「でもっ、今の時代、会社が不景気だからって理由で、会社のバスケ部だとかホッケー部とか……、色んな運動部が潰れてってる。
そんな中で、こんな好条件で入社できる会社なんて、他にはきっとないっ。
なのに……っ」
顔を上げた松永が、あたしを見る。
そして、すがるような顔を向けた。