ジュリエットに愛の花束を。


何も持ってないあたしが、樹の陸上まで奪うの?


あたしだけだったらいい。

あたしが一生懸命になれるモノがないってだけなら、樹に「別にいいんじゃねぇ?」って笑顔をもらうだけで落ち着くんだから。



だけど……。

樹は……、樹は、ちゃんと頑張れる道を持ってるのに。

ずっとずっと、頑張って追ってきたのに。


それを、あたしが……、

何もないあたしが、奪うの?



そんなの―――……




「瑞希?」


松永の声が、冷たい地面に寂しく落ちる。


地面を踊る落ち葉が、カサカサと乾いた音を立てた。






< 254 / 355 >

この作品をシェア

pagetop