ジュリエットに愛の花束を。
陸上にしても、バスケにしても、他の競技にしても。
社会人の活躍の場が減ってきているのは、よくニュースで流れてる。
こないだだって、どっかのスポーツチームが潰れたって言ってたし。
陸上部のある会社に入れるかだって分からないし、入れたところで……樹が満足できる陸上ができるかどうかは、分からない。
走れなくなるかもしれない。
樹だってそれを分かってるハズなのに。
なのに……。
樹が、本当にあたしと離れるのが嫌だって思ってくれたなら、それは嬉しいけど。
けど……、それが樹の陸上と引き換えだっていうなら、素直に喜べない。
『もう、遅いの……? 今からでも、返事を変えても大丈夫なの?』
あの後、あたしの問いに、松永は少しだけ明るい表情で答えた。
『椎名先輩の気持ちさえ変われば、うちの事はなんとかする。陸上がアレだけずば抜けてれば、特別扱いされたって問題ないし。
うちの会社、そういう時期じゃなくても他から引き抜いたりしてるし』
『……そう』
『……椎名先輩は、そんな理由で走るのやめちゃダメだと思うから』
付け足された言葉が、胸に痛かった。