ジュリエットに愛の花束を。
【第二章】
メープルプリン
次の日の朝起きると、キッチンにお兄ちゃんの姿があった。
作ってるモノは匂いからして……ハムエッグ?
リビングの入り口に立って眺めていると、それに気付いたお兄ちゃんが、爽やかな笑顔を向ける。
「おう、瑞希。今、おまえの好きなハムエッグ作ってるからな。
顔洗って来い。その間にパンも焼けるから」
「……はーい」
昨日の怒りはまだ残ってるのに、あまりに笑いかけてくるお兄ちゃんに調子が狂う。
顔を洗ってリビングに戻ると、チンとトーストの焼けた音がした。
「なにつける?」
「……マーガリン」
なんか……家に誰かがいるって変な感じ。
仕事が忙しくて国内外問わず出張ばかりしてる両親は、たまにしか帰ってこないし。
樹の部屋では、二人で朝ごはんが当たり前だったけど……家でお兄ちゃんと二人でって、なんか変。