ジュリエットに愛の花束を。
決断
暗闇の中で、テレビだけが明るく光る。
それが何の番組かも分からないまま、ただぼんやりと眺めていた。
ガチャっという鍵の開錠音の後、入ってきた樹の手によって、部屋を灯りが包み込んだ。
「……瑞希? なんだよ、電気ぐらいつけろよ。寝てたのか?」
帰ってくるなりそう言った樹に、振り向けないまま返事をする。
「……うん」
「今日は家の夕飯作んなくていいのか?」
「……うん。今日はいい」
「ふぅん。じゃあ、夕飯食べてく?
なんもねぇけど……、どうする? 久しぶりに食べ行くか?」
覗き込んで聞く樹を、じっと見つめる。
優しく微笑んだ樹に、胸がぎゅっと掴まれたみたいに苦しかった。
「……ねぇ、樹」
「ん?」
「なんで、『MSC』の入社話、蹴ったの?」