ジュリエットに愛の花束を。


「体温計、常備してるの?」

「うん。体温計とか、絆創膏とか傷とか風邪関係のモノ持ってると、男が食いつくから。

ほら、あたし、見た目が派手系じゃん? その意外性? ギャップは大事だから……って、いいから計って」


せかされて体温計を服の中に入れる。

大学の校内で、しかもみんながいる教室でこんな事してるのって……なんかちょっと人目を引くけど仕方ない。

今引いてる人目のほとんどは、皐のよく通る大きな声のせいだと思うけど。


少しして体温計が電子音を響かせると、あたしよりも先に皐がそれを奪って数字を読み上げる。


「38,7度……って、高熱じゃんっ!」

「あー……だからダルかったんだー……」

「バカじゃないの?! 普通気付くでしょ!」


数字を出された途端に、一気に身体の重みが増す。

気持ちが沈んでるからだって決めつけてたダルさは、どうやら熱からくるものだったらしい。


……昨日雨に濡れたのが原因かな。



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