ジュリエットに愛の花束を。


「ほら、捕まって」


隣にしゃがんだ小島が、あたしの腰に手を回す。

樹以外の男の手に違和感と嫌悪感を感じて、また樹が恋しくなって…….


ぎゅっと歯を食いしばった。


樹が好きなのに……。

樹の邪魔したくないのに……動けない。


動けないよ―――……。


樹が……、いい―――……。



樹……っ。



「あれ、動けない感じ? じゃー、お姫様抱っことかしちゃう?」


そう言った小島が、あたしを抱き上げようとした時……、

後ろから、強引に抱き寄せられた。


「……―――」


いつもの洗剤の匂いが、一気にあたしを包んだ。









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