ジュリエットに愛の花束を。
樹の答え
「勝手に触んな」
すぐ近くから聞こえてきた声に、抑えたハズの涙が浮かぶ。
信じられない想いに、声が出ない。
抱き締められたままの身体を動かすこともできなくて。
完全に、時間が止まってた。
止まった時間の中で、ただ背中に触れる樹の体温を感じてた。
触れただけで想いが溢れそうになる体温も、香りも、感触も。
あたしは、樹以外知らない。
「あ、すみません。つぅか、でも瑞希が送ってって……」
「『瑞希』?」
「あ、いえ。片桐が……」
樹に低い声で威嚇される小島が、あたふたしながら答える。
何も言えなくなった小島に、樹は諦めたのか小さなため息をつく。
そして、抱き締めていた腕を緩めて、あたしを向き合わせた。