ジュリエットに愛の花束を。


「里香、真人シストだもんね」

「なんでもシストをつければいいもんでもないだろ。

マニアって言え」

「……ていうか、全然会話が進まないんだけど」


朝からの会話に疲れながら、トーストを口に入れる。

こんがりキツネ色くらいまで焼いたトースト。

お兄ちゃんが、あたしの好みをまだ覚えていてくれた事を少し嬉しく思いながらも……。

やっぱり半年も居座られるのは迷惑だなーと、ため息をつく。


チラッと視線を向ければ、お兄ちゃんは何かを考えるようにトーストを頬張っていて。

懐かしい朝ごはんの風景に、仕方なく口論を諦めて牛乳を飲む。

じっとお兄ちゃんを見ていると、それに気付いたお兄ちゃんはあたしを見て……にっこり微笑んだ。



あたしが密かに片思いしてた時と変わらない笑顔。

10年近く思っていたお兄ちゃんは、まだ、どこも変わっていない。

優しい笑顔も、あたしを厳しくも優しく見守ってくれている事も。


どんなにムカついても、絶対に嫌いになんかなれない事を知ってるだけに性質が悪い。



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