ジュリエットに愛の花束を。


ただ、恋しさばかりが溢れ出して、ぼーっと樹を見つめていたあたしだったけど。

樹の言葉に疑問が湧いて聞く。


きょとんとして聞いたあたしを見て、樹は困り顔で笑う。

……あたしの好きな顔で、あたしの胸を締め付ける。


「知らねぇ。……けど、俺の場合はできない。

……つぅか、そんな簡単に離してやれるわけねぇだろ。それに、」

「だって、こうするしかないじゃんっ!」


樹の言葉を遮って言ったあたしを、樹は少し驚いた顔で見ていた。

だけど、それはすぐに真剣な顔に変わる。


そんな樹の表情に誘われるように、本心が言葉になって飛び出す。


「あたしと樹には、遠距離なんて絶対にできないもん!

遠距離なんかしたら、お互いにボロボロになるのが目に見えてる!

……だからって、樹に走るのをやめてまで傍にいて欲しいなんて、思えない。


思っても……、そんなわがまま、あたしには言えない。

言ったら、後悔する……」







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