ジュリエットに愛の花束を。


「おはよ」


改札で待っていた樹に声をかけると、樹はあたしの顔をじっと見て……ふっと微笑む。


「なに?」

「お兄さんとそれなりにうまくやってるみたいで安心しただけ」

「なんで顔見ただけで分かるの?」

「おまえは言葉が素直じゃないだけで、他は全部素直だから。

瑞希の顔見ればすぐ分かる」

「……あっそ」


顔色から気分が伝わるのはちょっと嫌だけど。

……でも、それだけあたしを見てきてくれた樹に嬉しくなる。

まぁ、でも付き合い始めて二年だし。

あたしだって樹の声のトーンとか仕草で、機嫌を読み取るからそれはおあいこか。


大学までの道を二人で歩き出す。

樹のアパートからとはまた違う風景に、なんだか新鮮な気分。

いつの間にか繋がっていた手は……多分、あたしが無意識に繋いだんだろうな。


何も言わないで手を繋いでる樹の横顔を見て、あたしは小さく笑みを零した。



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